image

夏のような2日間。
私は久しぶりにこの2日はお休みだった。
しばらく働き詰めだったからか、左耳がおかしく、日に何度となく目眩がするようになっていた。
少し休養が必要だったのだ。
何をするわけでもなく、なんとなくダラダラとしてみた。

1日目は次の日も休みなので、行きつけの店に行き、久しぶりにのんびりと酒を呑んだ。こんなにゆったり酒を呑んだのも本当に久しぶりな気がする。
2日目は、起きてからまずは洗濯や、部屋の掃除。
そしてフラッと多摩川土手に行ってストレッチをしたりした。その後、少しだけパキート号の手入れ。また気合いが入ってしまっては元も子もないので、少しだけ。

最近、バルパキートの事を考えている。原点に戻ろうと思うのだ。初めはピンチョスと酒だけを出す、そんなバルだった。
それがいつの間にやら、イベントで売れるものを考えたり、平日のランチ営業をしてみたり。それはそれで確かに良い経験をさせてもらったが、やはり私のやりたい事ではない。
ピンチョスとお酒。それだけを持って、私は旅がしたいだけなのだ。
いつの間にやら、足りない頭を使って、商売とは?などと考えていた。
確かに売れるようにはなったが、それと同時になんだかどうでも良くなっていた。
きちんと商売にするのならば、借金をしてでも、また店を持てば良いだけの事。わざわざ車でやる事はない。
商魂逞しい、利権絡みの話もウンザリである。
どこの組合だのなんだの面倒臭くて仕方がない。私は既存の何かに迎合するために、これを始めたのではない。唯一無二になる為である。

とりあえず、色んな装飾も施したが一度全部取っ払ってみた。
白いカウンターのみ。だいぶ使い込まれてペンキも剥がれてきてはいるが、作ったばかりの記憶が蘇る。
ここから始まったんだよなぁと感慨深い。

9月末に、このレストランでの仕事を終えてから約半月程。私は酒と簡単なピンチョス、それと生ハムを一本積んで、旅をしようと思う。行き先は適当に決めて、何となく夕方位からポツンと灯りをつけて酒を作る。客は多くなくて良い。適当に弁当を売って、はいサヨナラではなく、きちんと出会いたい。

仕事なら幾らでもある。やりたい事、出来る事は幾らでもある。
ただ、バルパキートのスタイルは、もう二度と変えたりしない。

そう思いながら、また作りたての時のようなバルパキートを眺めて、私はまたバルパキートが愛おしくて仕方なくなった。
私の夢の車なのだ。夢を乗せなければならない。通り行く人達が、この車を見るだけで、あっと心が温かくなるような、そんな車でなくてはならない。

この三ヶ月程、レストランで働きながら、一度バルパキートの事を忘れて働いてみた。
そしてまた考えたバルパキートの事。

そんな風に思って、今は次の旅の事を考えている。
そんな風に思いながら、2日間、ゆっくり過ごしたら、今日は目眩は起こらなかった。

旅の行き先は九州の博多あたりか、北海道の函館あたりか、と考えている。今は函館に気持ちが揺らいでいる。
スペインのレストランで働いていた時にお世話になった人が以前働いていたという、レストランバスクというお店があるという。そこに行ってみたいと思うのだ。

函館。まだ行ったことのない街。以前、突然一人旅に出た時、青森に行き、気持ちがまだ先を目指したいと思ったら渡ろうと思っていた北海道の入り口。
そこを目指してみても良いかもしれない。

また色んな事を感じるのだろう。
先のことは分からない。分からないからドキドキするのだ。
いつの間にか予定調和になっていくのは何のせいでもない。歳のせいでもない。不安からくる、自分で作り上げたレールの上を歩くからだ。
笑われるだろうが、私にはレールがない。作ろうとしても自ら脱線してしまう。
身体は丈夫な筈だが、違うことをすると、すぐにお知らせのように、身体が痺れてくる。
こればかりは仕方がないのである。多分私は無理をすると重大な病気にかかるに違いない。
そして何だか分からないが挑戦してみようと思った時、計り知れない力を発揮する、そんな男なのだ。
不安など怖くない。予定調和のような日々が永遠に続くのを想像することの方が私にとっては怖い。
そうも思いながら、いつか、大切な人と、何事もないような毎日のちょっとした変化を共感しながら、静かに暮らしたい。そんな風にも思う。
そんな、自分でも理解しがたい、偏屈な人間なのだ。

男40にして迷わず。お恥ずかしながら、目下迷走中であります。