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昨日は、El Pontarronのアルベルゲに、もう一人、巡礼者が泊まっていた。デルフという男性。寝る前に結構話をした。どうやら昔に少し、親が日本人と結婚していた時期があるらしく、日本人だと言うとなんだか嬉しそうだった。横浜に行ったら、秋元という人を捜してみてくれ、と言う。横浜は大きな街だし、秋元は、きっといっぱいいるよ、というと、それはそうだな、と笑った。
朝、アルベルゲを経営する、村に一件のバルに二人で向かった。出かける前、私が歯磨きをしてベッドに戻ると、雨でギターが濡れてしまうからと、私のギターをゴミ袋で包んでくれていた。
バルでトルティーヤのボカディヨを包んでもらい、コーヒーを飲んで出かける。記念に一枚、写真を撮ろう、と写真を撮った。もう3度目の巡礼だという。拾った木の枝を杖にして、彼は歩いていった。
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今日は、とにかくSantanderを目指すと決めていた。標識では60km。この距離もなんだかもう余裕に感じはじめていた。しかし、やはり山道続き。これはあまり距離を気にしてはいけない気がしてきた。
Laredoという町につき、バルで道を尋ね、そして巡礼手帳にスタンプを押してもらう。巡礼路にある町のバルには、殆ど、このスタンプがある。
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私は段々と増えてきたこの巡礼手帳を眺めるのが好きになってきた。本当は、この町から船でSantonaという町に行ける筈なのだが、バルの主人が、今は年末だから、船は出ないよ、と言う。仕方なく遠回りをする。

地図もあるし、自転車なので、ちょっと近道になるルートを自分で考え、その道を行く事にした。
だが、地図が古かったのか、一般道の筈の道が、高速道路のようになっていた。120kmの標識。車がビュンビュン走っていく。途中クラクションを鳴らす者もいた。おそらく自転車が入ってきてはいけない道なのだろう。しかし、こうなったら仕方ない。ケセラセラを歌いながら走り続けた。
やっと横道に出られる道を見つけ、そこを出ると、Astilleroという町に着いた。もう日は暮れかかっている。地図上では、Santanderを越えた所だ。だが、このあたりにアルベルゲはない。しかも閑静な住宅街。テントを立てる場所はなさそうだ。仕方がない。少し戻る形になるが、Santanderを目指そう、と先を急ぐ。
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看板が見えた。Santanderに到着だ。しかしながら、やはり大きな町では、黄色い矢印が殆どない。そして大き過ぎてアルベルゲの場所も見当がつかない。人に聞いても、分からない者ばかりだ。ここが、巡礼路上にある町だとも分かっていないようである。
初めに入ったバルには、巡礼手帳のスタンプすらない。もう信じられない話である。
私は途方に暮れた。もうどこかのベンチの上で、寝袋に入って寝るしかないのかと思った。それにしても、このどこか冷たい町で、そしてこの冬の寒空の下、海風に吹かれながら寝るのは、なんとも言えない気持ちになるだろう。大きな町なので、物乞いの老人も沢山いた。安い宿を知らないか、と聞いても彼らも知らなかった。
とうとう日は暮れた。薄暗い路地裏に入ってみる。どこかスラム街のようだ。人気が急に少なくなる。賑やかな大通りには、安宿などないと思ったからだ。ポツンとある灯りの方にいくと、男が一人、立っていた。安宿を知らないか、と聞くと、少し離れた場所にあると言う。しかし、それも不確かな情報だ。とにかくトンネルがあるから、そこに入って行けと言うので、見つけたトンネルの中に入って行くと、また町が開けている。しかし、彼の言ったのは、本当にここなのだろうか。少し様子が違うし、安宿がある気配もない。なんだろうか、ここは、毛皮のコートを羽織った女性が良く目につく。その割には、いろんな人種が住んでいる移民街のようでもある。
もうヘトヘトだった。山を登り、そして降り、高速道路に迷い込み、70km以上は走っていた。笑顔を絶やさぬようにと思っていたのに、いつの間にかそれも消えていた。
もう仕方ないかと、どこかあきらめ、煙草に火を点けた所に、目の前のビルから女性が出てきた。安い宿を知りませんか?と聞いてみた。すると、私、この上に住んでるんだけど、このビルにはペンション、といって安いホテルがいっぱい入ってるのよ、と言う。私は上に住んでるから、泊まった事はないので、詳しくは知らないけど安い筈よ、と教えてくれた。
一番低い階のペンションのチャイムを鳴らす。どうやらやっているようだ。助かった。もう、このペンションの女主人の感じの悪さも、どうでもいい。とにかく今日はここで眠れそうだ。20ユーロ。確かに安いが、昨日の村の宿は5ユーロだ。4倍である。
シャワーを浴びて、少々洗濯をし、町に出てみた。腹もペコペコだ。
しかし、大きな町なのにやっている店も少ない。年末だし、日曜日だし、休みが多いのも仕方ないだろう。近くに見つけたバルに入って、Platos combinadosを頼んだ。ビールも呑む。2杯も呑んだら、顔が真っ赤になった。余程疲れているのだろう。
少し、町を散歩したが、今日持ってしまったイメージを、この疲れた身体で今日中に塗り替えるのは、難しそうだ。間もなく部屋に戻り、これを書いている。

デルフは、今、どの町にいるのだろう。道のりの険しさのせいか、別れたのが今日の事では無いようでもある。
巡礼。出来れば、巡礼を歓迎される所にいたい。だが、これもまた巡礼、という事なのだろう。
明日は、巡礼路に沿って、巡礼の町で、巡礼手帳にスタンプを押してもらう。そんなゆっくりとした温かい道になるといい。
大きな見知らぬ町。こんな気持ち、久しぶりだ。全てが恋しい。

沢山、淋しくなれば人に優しくなれるだろうか。
いや、私と言う人間は、どれだけ淋しくなっても、すぐにそれを忘れてしまうだろう。人に優しく。変わる事のない優しさ。やさしさとは何か?と難しい事を言っているわけではない。柔らかいもの。私は、それを持っていたい。
坂を登りながら、時折歌う。

いつまでも絶える事無く
友達でいよう
明日の日を夢見て
希望の道を

空を飛ぶ鳥のように
自由に生きる
今日の日はさようなら
また会う日まで

信じ合う喜びを大切にしよう
今日の日はさようなら
また会う日まで

何だか、今頃になって染みる歌だ。