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とうとう最後の日。
この日がやってきた。あっという間の8ヶ月。
風の強い日。私は、風の強い日は吉日だと思っている。何か新しい事を始める時、いつもこの風の強い日がやってくる。
夕暮れ時に一人、明日には発つこの町を散歩した。なんだか、少し実感が湧かない。ただただ、この町をもう離れるという事の方が、少し寂しい。でも、寂しいという気持ちを持てる程、この町の事を好きになれて良かったとも思う。
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突然やってきたバックパックの男。初めは日本からヤクザが来たかと思った、という印象から始まった。随分とぼけた事もしたし、最後には尻に手を突っ込まれるほどになった。皆にはどのように写ったのだろうか。どう印象は変わったのだろうか。それは私には分からない。ただ、腹の底から笑い合った瞬間がある。言葉は大切だが、それがなくとも繋がれる瞬間を何度も感じる事が出来た。
倉庫の入り口で煙草を吸っている男の子を見つけ、声をかけたのが始まりだった。写真の彼がその男の子アンデル。無口だがとても良い男なのだ。
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最後の一皿を一人で作らせてもらい、無事仕事を終えた。一瞬、ぐっと感情が込み上げてきたが、それもすぐに治まり、やはり終止笑っていた。
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全て終えてから、皆がプレゼントをくれた。ここバスクの名産で、ワインを携帯する為の革製のボトル。みんなの寄せ書きが書かれたものだ。呑め呑め、と言うので呑んでみるとワインではない。私の好きなウイスキーだった。
その後には、バカンスに入る日なので、皆でソシエダで晩餐会。
参加者全員の名前が書かれた籤を引き、書かれた名前の人のプレゼントを、誰が用意したのか分からないようにプレゼントするといった催しもあった。
私へのプレゼントは、ここバスクのチームのボートの模型。そしてチャコリ。さらに、サンティアゴの巡礼者の証である、帆立の貝殻をモチーフにしたペンダント。ペンダントといっても、灰皿代わりになるくらいの大きいものだ。これをぶら下げておけば、すぐに巡礼者だと分かってもらえるだろう。
今から、役に立つものばかりだ。私が何が好きで、何をしようとしているのかが分かってもらえている。それだけで嬉しい気持ちになった。
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同じメサの仲間。
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そして、社長のGorkaと弟のKepa。
本当にみんなありがとう。


さあ、明日、朝8時。日本時間にすれば午後4時。私は旅に出る。
荷物をまとめながら、ようやく実感も湧いてきたようだ。
本当ならば、旅の前日には『旅前夜』と題して書きたい事もあった。私という人間の背景、そしてこの旅の意味するもの。伝えたい事。そんなものを書こうともしていた。
だが、今はあまり大袈裟にしたくない。そんな気持ちでいる。旅の途中に触れることもあるかもしれないが、もうそんな事は今はどうでもいいのだ。伝える、という事は、真実を述べる事だけではない。
ただ、いつも出かけるときのように、さあ行きますか、と出て行きたい。
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今、片付けられた部屋の中で、外の強い風の音を聴いている。どんな旅になるだろう。
大丈夫。俺には俺がいる。そんな事を思いながら海岸沿いを歩いたのを思い出す。

さあ、それでは。いつものように。
行ってきます。