IMG_4227

昨日は予定通り、猪のシチューを食べにオイアルツンへ。
そういえば、ここオンダリビアにやってきて、初めて友人と食事したのも同じレストランだった。まだ、メニューも全然読めなかったので、一品ずつ説明を受けて注文した頃が懐かしい。このまま、もう少しここに住んでも、去る時には同じ事を言うかもしれないが、やっとここに慣れてきた時期に、また旅に出るのだ。今までも、時間の流れに幾度となく不思議を感じてきたが、今回のこの8ヶ月間は、特別な時間だった。初めてのサマータイムを経験し、そして日本との8時間の時差の中で、時とは何なのか、随分と考えさせられた。
人間の本来持っているスピードで日本に帰る時、この8時間の時差は、ゆっくりと、そして自然に無くなっているのだと思うと、不思議な感覚になる。いわば、飛行機というものはタイムマシーンなのだな、なんて思うのだ。この国から、自分の足で日本に着いとき、私はここオンダリビアをどのように感じるのだろうか。夢だったかのように遠く感じるのだろうか。
IMG_4247

IMG_4248

IMG_4249

IMG_4250

もうおそらく一生のうちに再び来る事がないだろうと思われる、オイアルツンの田舎にあるレストラン。いつものカルドと言うスープから始まり、ペチュガという鶏の薄焼き。そして猪のシチュー。どれも本当に美味い。ここに暮らす人達が普段食べる、本当のこの土地の料理たち。猪のシチューは、とても柔らかく、当たり前のように赤ワインに合う。そしてこのワインはボトルで5ユーロ。日本ならば、スーパーで買っても、この値段では買えないだろう。ここでこんなに安く呑めるのに、私はそんな値段を出してまで、日本で呑むかどうかは疑問である。そして、私はリオハならなんでもいいと、適当に頼んで出てきた赤ワインが好きだ。レセルバでもグランレセルバなく、クリアンサという若いワイン。この安いワインの美味さは格別である。そして、料理にサラッと合ってしまう柔軟さと、気取らない素朴さがなんとも良い。本来、お洒落とは金のかかるものを指すのではなく、こういう事を言うのではないだろうか。
忘れられない味、匂い。ここ、バスクにやってきて、そんなものが幾つも持てた事を幸せに思う。本来、私は料理修行に来たわけなので、そういう意味では十分に学び、そして楽しむ事が出来た。
高校も出ていない不良少年が、下北沢の居酒屋で料理を始め、新宿歌舞伎町のテキ屋でたこ焼きを焼いたり、渋谷で料理修行をしたり。そして自分の店を持ち、小麦粉を捏ねながら異国に興味を持ち、今はここ、スペインの星付きレストランで働いている。そして、それも束の間、放浪の旅に出る。思い返せば思い返す程、自分ながらに笑ってしまう、おかしな人生。どうやら私はそうやって笑える人生を生きたいようだ。あいつは立派な奴だ、だとか言われなくても良い。ただ、振り返ったとき、ふっと笑ってしまうように生きたいようなのだ。
IMG_4230

IMG_4239

IMG_4238

IMG_4235

もうすぐ離れる町を、存分に歩いた。小さな路地裏。そこから見える時計台。そして城壁の上まで。この町は昔、この城壁の中だけにあったらしい。敵の攻撃から身を守る為に。今も旧市街はそのまま残っており、その存在感は圧倒的である。そして昔はもっと小さな町だったのが分かる。まるでラピュタのような町だ。広がる草原にポツンと城壁に囲まれた町が見える。そんな風景を想像してみる。この城壁を見ながら歩いていると、いろんな思いが湧き上がる。この城壁が、守ったもの、それと同時に縛り付けていたもの。歴史、そしてその頃の価値観、人々の暮らし。そんなものが垣間見える瞬間が、確かにあるのだ。
今、働くレストランの建物も、もう100年も前からあるものだ。石造りで、とてもそんな風には見えない。が、昔の白黒写真を見ると、確かにこの建物は、このままの姿で写っており、その前には、まるで漫画のように馬車を引く人々が歩いている。
100年。この単位に感じる価値観が、歳を取るにつれて変わってくる。100年とはそんなに昔なのだろうか。私たちは、この100年という目紛しい変化の時代に産まれてきたのだと、改めて思う事が多い。
ここスペインに石造りの建物が多いのは、地震などがないからだろうか。そして、平気で100年も前の建物が残っていて、昔の風景がそのまま残っている場所も数多い。その昔の写真には、今ある建物が写っていて、そこに写る人々が、余りにも今と違う為、驚くのである。
日本に、そんな風景が残る場所は稀だろう。地震が多い為に木造建築が多かったのかもしれない。そして地震などの災害の度に、大きく町は姿を変えた。しかしながら、それは、日本人の持つ豊かな柔軟さ、変わる事への強さ、自然と向き合う粘り強さを身につける事にも、繋がったのではないだろうか。
建物や風景で、そこに暮らす人々の背景を想像する。そんな事をしながら、夕暮れ時、異国の城壁の上を歩く。

今日は、いつも行く近くのバルで昼食をした。いつもコーヒーとトルティーヤしか頼まないのに、Menu del diaという所謂日替わり定食のようなものを注文し、いつものカマレラの叔母さんが、少し驚いていたようだ。
テラスが日陰になる午後に、ゴアテックスなどを風呂場で洗ってテラスに干し、ビルバオで買った撥水スプレーを施した。これで、日本に着くまで撥水力が保たれれば良いのだが。
気がつくと鼻歌を歌いながら、少々匂うNIKWAXを吹き付けていた。

今にも目からこぼれそうな涙のわけが言えません
今日も明日も明後日も何かを探すでしょう

僕の右手を知りませんか。やっぱりTHE BLUE HEARTSなのでした。