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今日は、仕事は昼間のみ。
天気が良く、厨房に太陽の光が射し込んでいる。この景色を見るのも、あと僅かだ。
太陽の光があたたかい。
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久しぶりに天気がいいので、自転車で国境の町へ。
途中に流れる川が、今日はとても静かだ。流れの見えない川も美しい。
お気に入りのカフェでコーヒーを飲み、今日はいつも車道から見える川沿いの道に入ってみる事にした。
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車道の脇から小道に入ると、草原と小川の横にポツンと遺跡のような建物がある。近くで見てもこれが一体なんなのであるか分からなかったが、夕暮れが似合う建物だ。
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小さな川の脇には小さな小屋が並ぶ。
この通りを散歩している人達も多かった。可愛い道だ。散歩したくなる気持ちも分かる。
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ポツンと2つ、向かい合わせに置かれたベンチ。自転車を停めて煙草を吸った。
いつも通る車道が遠くに見える。
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川沿いをしばらく走り、橋を渡って対岸に出た。古びたボートが、流れの静かな小川に浮かぶ。まるで絵画の様。
いつも走っていた車道から見えていたのだ。このエアーポケットのような小さな町にずっと来てみたいと思っていた。忙しく行き交う車たちの横を走りながら、ここだけ時間が止まっているようにも見えたのだ。
初めて訪れた町。やはり、この川の流れのように、ここだけ時間の流れが違うようだった。

そこでふと足元を見ると、私は驚いた。小川沿いの道に、どこかで見たホタテ貝の印がある。
ここはなんと、私が3週間後に走り出す、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの道、カミーノ・デ・サンティアゴ、北の道だったのだ。
興奮した。
帰る方向が合っているのか分からなかったが、その印に沿って行く事にした。まだ、日は暮れまい。

北の道は、フランス人の道という一番ポピュラーな道と違い、印が随分少ないと言う。だからなのか、巡礼路の印なのか分からないような手書きの黄色い矢印が、所々にある。それを信じて走ってみた。
しばらくすると見失ってしまったが、イルンの中心街に出た。確かにここは、私が巡礼手帳を貰った巡礼路の出発点である。どうやら、ここ北の道もフランスから繋がっているようだ。
家に帰ろうと思い、見慣れた道を走っていると、また、不確かな手書きの矢印がある事に気づいた。方向は少しばかり違うが、また矢印に誘われて進むと、きちんとした看板が、住宅地の隙間に現れた。
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これだ。私はここから走り出すのだ。まさか、いつも走っている道のこんな脇に看板があり、そして、ここが巡礼路だったとは。
うまく出来過ぎている。何となくスペインにやってきて、何となくここに住み、何となく巡礼を決めたのであるが、まさに巡礼路の脇に住んでいたのだ。
スペインに来る前に、友人がバスク地方の映像だと言ってDVDを見せてくれた事があるが、それも今思えば巡礼路に沿った町の紹介だった。
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住宅地を少し抜けると、草原が広がっている。夕日も今にも沈みそうだ。
ここか、ここを走っていくのか。と、自転車を漕ぎながら、子供のように笑った。
初めて登った山の中腹で振り返り、山々の景色を見た時と同じ気持ち。
もう、始まっていたのだ。
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道は続いていて、また車道を横切って続いている。予想通り、車道を行く道ではない。田舎道を走っていくのだ。これから始まる旅を、想像しただけで興奮した。
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横切る車道も、いつも通っていた道だった。Decathlonというスポーツ用品店に行く道だ。注意しないと見えないくらいの手書きの黄色い矢印が、山の方角を指している。
私は、この自転車でこの先を行くのだ。黄色の矢印に誘われて。
そしてこれから、このような景色をしばらく見るわけである。

見た事もないものを見たくて、旅をする。しかし、その道は、どうやら懐かしい道のようだ。