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今日は予定通り、Renfeという電車に乗り、サンセバスティアンへ。
仕事でもないのに早起きをして向かった。
少し前、バルセロナから夜行バスに乗り、降り立ったイルンの駅。何だか懐かしい。
こっちに来て、移動はもっぱらバスばかりで、今まで列車に乗った事がなかった。というのも、ここオンダリビアには駅はないし、バス停が近くに点在し、サンセバスティアンまでの直行バスがある為、乗る必要がなかったのだ。

しかし、列車に自転車を乗せられると聞き、何だかワクワクしながら、今回初めて乗ったのだ。
列車も初めてならば、自転車を乗せるのも初めて。たかがこんな事だが、すごく新鮮だ。
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うーん。変なかんじだな・・と一人、笑いながら、発車時間を待つ。思いのほか、時間通りに発車した。
もう行き慣れたサンセバスティアンに行くだけなのに、大きな旅が始まる時のように胸が躍った。
Renfeの車窓は、もう年季が入り、磨りガラスのように摩耗し、外の景色が霞んで見えた。
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客席はガラガラだ。
つい先ほど、サンセバスティアン行きの列車はこれですか?と尋ねた女性が少し後ろに座っているだけだ。

私が急にスペインに行くと言い出した時、友人がテレビで放映されていたと言って、スペイン北部の列車の旅番組を録画して見せてくれた。その列車に今、私は乗っているのだ。
私は、本当に思いつきで、ここに来たのだ。スペインなど知らないし、ましてやバスクの存在すら知らなかった人間だ。それが思いついて1ヶ月程で、ここサンセバスティアンにやってきた。
下調べもする事なく来たので、あー、ここが本で見たあれかー、などという事がない。
しかし、この列車と、サンセバスティアンの駅は、あーここなんだなーと感慨深い。

サンセバスティアンに着いてから、自転車で海岸沿いを走る。もう何度も歩いたこの道を、自転車で走る事を想像していただろうか。とても気持ちいい。スリオラ海岸の端にあるPatagoniaに向かうと、間もなく到着。
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なんだかよくわからないが、Patagoniaの旗と記念撮影。
目星を付けていたものがすぐに見つかった。このまま着ていきます、と感じのいい女性店員に言い、買い立てのフリースを羽織ってまた、海岸沿いを走った。さっきまで晴れていたのに、ちょうど雲行きが怪しくなり、肌寒くなった所だ。フリースがちょうど良い。P9160172

ここスリオラは、サーファーたちが多い。そのせいか、Patagoniaもウェットスーツを沢山置いてあった。来年春の旅がなければ、ボードもウェットスーツも買いたい所だが、運べないのでやめておこう。

帰りは、サンセバスティアンの駅ではなく、グロスという地区にある駅に向かった。
行きの列車で、サンセバスティアンの一つ前に止まった駅。あー、ここにも駅があるんだな、と初めて知った。グロスの駅はこじんまりとしていて良い。警官などもいない。
ここグロスは、私が初めてサンセバスティアンにやって来た時、泊まったユースホステルのある所だ。そのせいか、何だか少し落ち着く。一番初めて一人、慣れないスペイン語で朝食を頼んだカフェでコーヒーを飲んだ。
ここでトスタードという単純な単語を覚えた。
2回目に来たときは、前から知っていたかのように、得意げに注文したものだ。

天気も崩れて来たし、用事も他にあるので、午後2時にはオンダリビアに向かった。
買ったばかりのフリースを自転車に置き、グロス駅のホームで写真を一枚。
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このカメラも随分愛着がわいて来た。
一度、日本に帰った際、新宿で買ったOlympus。
長い旅をするのだと、幾つかの店舗で事情を話し、おすすめを聞いた所、一致して薦められたのが、このOlympus penだった。
私は、カメラは昔から好きで、すごく古いOlympus Penを持っていたのだ。
古くてあまり状態も良くなかったので、記念撮影には向かなかったが、時折、ビックリするくらい素晴らしい写真が撮れた。
その復刻のようなデジタルカメラ。これもまた何かのご縁だろう。
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私は、小さい頃から、母が旅行好きであった為、いろんな所に旅行に行った。
母は、私にいろんなものを見せたかったのかもしれない。
しかしながら残念な事に、私は旅のほとんどを覚えていない。
しかし、ほとんど覚えていないのにも関わらず、強烈に覚えている旅行がある。
京都と、尾瀬である。
尾瀬。歌もはっきりと覚えている。途中泊まった山小屋も、水芭蕉の花も。母が新しいカメラを買ったといって今までの古いカメラを私にくれたのが、嬉しくて、花の写真をそれはもう沢山撮った。
貰ったカメラは何だったかは覚えていないが、母が新しく買ったカメラは、確かミノルタだったはずだ。

京都も嵐山も素敵だったし、鮎は最高に美味かった。鈴虫寺や大原三千院、あぜ道のような道を沢山歩いた。途中にあった漬け物小屋で初めて、柴漬けを喰って以来、私は柴漬けが大好きである。

この旅行の共通点は、自分の足で歩いたという事である。
それに随分前に気付いたときは、ハッとしたものだ。

きっと、そこ以外にも綺麗な所には沢山行っているはずだ。言い方は悪いが、京都、尾瀬が群を抜いて綺麗だったから覚えている訳ではないと思う。
自分の足で歩いたものは、忘れないのだ。

なので、私は旅を何で行くのかは、大変重要だと思う。
いっぱい旅をする、数は大して重要ではないように思う。
何を見て、何を感じるのか。

ふと、散歩をしていると、毎日通っているはずの道に、こんなのあったっけ?と発見する事も多いように。

きっと、それぞれの、それぞれの旅があるはずだ。